「平均年収」がサイトごとに違うのはなぜか。統計の読み方
同じ職種を調べたのに、あるサイトでは年収420万円、別のサイトでは560万円と書いてある。どちらが正しいのか分からなくなります。
先に結論を書きます。どちらも嘘ではなく、数えているものが違うだけです。何を足して何を除いているかを見れば、数字は読めるようになります。
国の統計でいう「賃金」には何が入っていないのか
もっとも参照されるのは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。ここでいう「賃金」は、次の定義になっています。
調査実施年6月分の所定内給与額の平均
所定内給与額とは、あらかじめ決められた条件で支払われた金額のうち、超過労働給与額(残業代・休日出勤手当・深夜手当)を除いたものです。そして賞与も入っていません。
つまり「賃金 × 12 = 年収」にはなりません。残業代と賞与のぶんだけ、実際の年収は上になります。

医療・福祉の賃金はいくらか
令和7年の調査では、産業別の賃金(男女計・年齢計)はこうなっています。
| 産業 | 月額(所定内給与) |
|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 44万4000円 |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 44万300円 |
| 教育,学習支援業 | 37万9400円 |
| 医療,福祉 | 31万5700円 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 27万7200円 |
| 全産業の平均(男女計) | 34万600円 |
医療・福祉で働く人の平均年齢は44.0歳、平均勤続年数は9.9年です。前年から3.0%上がっています。
この31万5700円には、夜勤手当のうち深夜割増にあたる部分と、賞与が入っていません。看護や介護で夜勤がある人の実際の月収は、これより上になります。
サイトごとに数字が変わる3つの理由
1. 賞与を足しているかどうか
「所定内給与×12」で出すか、「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」で出すかで、数十万円から百万円以上変わります。
2. 誰を数えているか
国の統計は全国の事業所が対象です。転職サイトの数字は、そのサイトの登録者や求人票が対象です。そもそも母集団が違います。
3. 残業代を含めているか
夜勤や残業が多い職場ほど、この差が開きます。
自分の数字と比べるときの手順
- 直近の給与明細を1枚出す
- 支給額から残業手当・深夜手当・休日手当を引く
- 通勤手当も引く(統計には含まれません)
- 残った額を、統計の月額と比べる
年収同士で比べようとすると、賞与の扱いがずれて正確に比較できません。月額の所定内給与で比べるのがいちばん確実です。
数字が低くても、評価が低いわけではない
平均を下回っていたとしても、それは地域・年齢・事業所の規模の違いで説明がつくことがほとんどです。統計の平均は全国・全年齢の混ざった数字です。
比べる目的は落ち込むためではなく、動いたときにどこまで上がりうるかの見当をつけるためです。
今日やるとしたら
給与明細を1枚出して、残業代と通勤手当を除いた月額を計算してください。
この1つの数字があるだけで、求人票の月給と正しく比べられるようになります。
よくある質問
- 国の統計の「賃金」を12倍すれば年収になりますか?
- なりません。統計の賃金は6月分の所定内給与額で、残業代と賞与が含まれていないためです。年収に近づけるには年間賞与額を別に足す必要があります。
- 転職サイトの平均年収は信用できますか?
- 集計の元が違うので、比べるときは同じ条件かどうかを確認してください。自社の登録者だけを集計したものと、国の統計は対象がまったく違います。
- 自分の年収と比べるにはどうすればいいですか?
- 給与明細から残業代を除いた月額を出し、統計の数字と月単位で比べるのが正確です。