30代で「特別なスキルがない」と感じている人へ
転職を考えたとき、多くの人が最初につまずくのがここです。
「自分には、これといったスキルがない」
先に言っておくと、この感覚のほとんどは事実ではありません。スキルが無いのではなく、自分の経験を数える言葉を持っていないだけです。
「スキル」という言葉が広すぎる
スキルと聞いて思い浮かべるものは、たいてい資格や技術です。プログラミング、簿記、英語、専門職の免許。
ところが採用の場で見られているのは、それだけではありません。むしろ日々の業務のなかで身についた、名前のついていない能力のほうが多く問われます。
たとえば、こういうものです。
- 締切から逆算して作業を割り振れる
- 部署をまたぐ調整を、角を立てずに進められる
- 前任者のやり方を引き継ぎつつ、無駄な工程を減らせる
- 経験の浅い人に、手順を言葉で説明できる
- 想定外が起きたとき、誰に確認すべきかがわかる
これらは履歴書の資格欄に書けません。だから「自分にはスキルがない」と感じてしまう。ただ、現場ではこれができる人とできない人で、仕事の進み方がはっきり変わります。
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数えるための3つの問い
抽象的な話にしないために、具体的な手順にします。次の3つに答えてみてください。紙でもメモアプリでもかまいません。

問い1:直近1年で、あなたに聞きに来た質問は何ですか
同僚や後輩が、あなたに確認しに来る内容を思い出してください。
「この処理ってどうやるんでしたっけ」 「この件、誰に話を通せばいいですか」
人が聞きに来るということは、そこにあなたの蓄積があるということです。3つ書き出せれば十分です。
問い2:あなたがいない日、何が止まりますか
休んだ翌日に、溜まっている仕事は何でしょうか。
止まるものがあるなら、それはあなたが担っている機能です。「誰でもできる仕事」だと思っていても、実際に止まるなら、代わりがいないということです。
問い3:入社したころの自分に、いま教えられることは何ですか
1年目の自分が知らなかったことを、いまのあなたは知っています。その差分が、この数年で身についたものです。
「最初は電話が怖かったが、いまは初対面の相手にも要件を整理して伝えられる」
これは立派な変化です。
書き出したものを、そのまま言葉にする
3つの問いに答えると、5〜10個の項目が並ぶはずです。ここで大事なのは、言い換えて立派に見せようとしないことです。
「部門間調整における高度なファシリテーション能力」と書く必要はありません。
「経理と営業で話が食い違ったとき、間に入って条件をすり合わせた」
こう書くほうが、読む側には伝わります。採用担当者は抽象的な能力名を読み慣れていて、具体的な場面のほうを信用します。
書き方に迷ったら、1項目を次の3つに分けてみてください。
- どんな場面だったか(誰と誰の間で、何が起きていたか)
- 自分が何をしたか(確認した、まとめた、提案した、引き継いだ)
- その後どうなったか(期限に間に合った、問い合わせが減った、手戻りがなくなった)
結果の欄は、数字がなくてもかまいません。「翌月から同じ確認が来なくなった」のような変化で十分です。この3点がそろうと、職務経歴書にも面接の受け答えにも、そのまま使えます。
それでも足りないと感じたときの考え方
書き出してみて、やはり物足りないと感じることもあると思います。
そのときに確認してほしいのは、誰と比べているかです。
転職市場で比較されるのは、同じ職種・同じ年代の応募者です。SNSで見かける突出した人や、社内でいちばんできる先輩ではありません。同年代の平均的な事務職、平均的な営業職と比べたとき、あなたの3年や5年が特別に薄いということは、まず起きません。
もうひとつ。企業が30代に求めるのは、突出したスキルより「入社後すぐに戦力として動けること」であることが多いです。業務の流れがわかり、一人で判断できる範囲があり、若手に教えられる。これは20代には無く、30代には自然に備わっているものです。
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準備が整うのを待たなくていい
スキルを棚卸しすると、次に「もう少し経験を積んでから動こう」と考えたくなります。
その気持ちは自然ですが、条件が完全に整う日は来ません。資格を取っても、次の不安が出てきます。
代わりにおすすめしたいのは、準備と情報収集を切り離すことです。応募するかどうかを決める前に、どんな会社が自分のような経歴を求めているかだけ知っておく。これなら、いまの仕事を続けながらできます。
具体的には、気になる求人を3〜5件選び、「必須条件」と「歓迎条件」を書き出した項目と並べてみます。重なるものが多ければ、その求人はあなたの経歴を想定して書かれています。重ならない条件が一つ二つなら、それは応募を見送る理由ではなく、面接で「どう補うか」を話す材料になります。
自分の経験がどう見られるかを確かめる手順は、別の記事にまとめています。
職種ごとに、名前のついていない力を言葉にすると
3つの問いに答えても言葉が出てこないときは、職種ごとの例を手がかりにしてください。どれも、資格欄には書けないけれど、採用の場でよく見られている力です。
| 職種 | ふだんの仕事 | 言葉にした例 |
|---|---|---|
| 事務 | 請求書の処理、問い合わせ対応 | 月末に集中する処理を、締め日から逆算して前倒しで進められる |
| 営業 | 既存顧客の訪問、見積もり | 顧客ごとの発注の時期を覚えていて、先回りして提案できる |
| 販売 | 接客、品出し、シフト | 売れ筋の変化に気づいて、発注の量を店長に提案できる |
| 介護 | 身体介護、記録 | 利用者のいつもと違う様子に気づき、看護職に早めに伝えられる |
| 製造 | ラインの作業、点検 | 不良の出やすい工程を知っていて、新人に注意点を教えられる |
右の列は、どれも「経験の年数」がないと出てこない力です。自分の職種に近い行を読んで、同じような場面が自分にもあったかを思い出してみてください。厚生労働省のツールで書き出す方法は職種が変わっても持っていける力は何かにまとめています。
面接で「あなたの強みは」と聞かれたら
書き出した項目は、面接でもそのまま使えます。答えは次の3つの順番で組み立てると、短くても伝わります。
- 一言で言う:「関係する部署の間で、話を取りまとめるのが得意です」
- 場面を一つ話す:「経理と営業で請求の条件が食い違ったとき、両方の話を聞いて条件をそろえました」
- その後どうなったかを添える:「それ以来、同じ食い違いは起きていません」
強みは1つか2つで十分です。たくさん並べるより、一つの場面を具体的に話せるほうが、聞く側の記憶に残ります。
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それでも資格を取りたいなら、どう選べばいいか
資格がないことが気になって、何か取ろうと考える人もいます。選ぶときは、行きたい求人の「必須条件」や「歓迎条件」に書かれている資格から選んでください。求人に書かれていない資格は、取っても評価に結びつきにくいからです。
資格の種類によって、転職での効き方は大きく違います。その資格がないとできない仕事なのか、持っていると有利になる程度なのかは、資格を取れば市場価値は上がるのかで比べています。
今日やるとしたら
3つの問いのうち、問い1だけに答えてください。直近1年で、同僚や後輩があなたに聞きに来た質問を3つ書き出すだけです。
5分あれば終わります。書き出した3つが、あなたの経験のいちばん分かりやすい証拠になります。その経験がどのくらい求められているかは、自分の市場価値がわからない人のための、簡単な確認手順で確かめられます。
しごと大全で見る職業
仕事内容・平均年収・求人倍率は、それぞれの職業ページにまとめています。