薬剤師の1割は、医薬品関係の企業で働いている。薬局・病院の経験しかない人が、製薬・治験・卸・行政へ移るときの入口を表で比べる

資格職の転職 公開 2026-10-13

白い台に並ぶフラスコとガラス器具

厚生労働省の令和6年の統計では、薬剤師は329,045人。そのうち薬局で働く人が60.0%、病院・診療所が19.2%で、医薬品関係の企業で働く人は10.4%、行政機関や保健衛生施設は2.1%です。

薬局や病院の経験しかないと、企業や行政は遠く感じるかもしれません。ただ、職場によって未経験者の入り方はかなり違います。この記事では、まず数字で職場の広がりを確かめ、次に職場ごとの入口を表で比べ、最後に臨床の経験をどう伝えるかを整理します。

薬局・病院の外では、どこで何人が働いている?

令和6年末時点の内訳は、次のとおりです。

  • 医薬品の製造販売業・製造業(製薬会社や工場):24,102人(7.3%)
  • 店舗販売業(ドラッグストアなど):5,090人(1.5%)
  • 卸売販売業(医薬品卸):4,959人(1.5%)
  • 大学:5,011人(1.5%)
  • 衛生行政機関・保健衛生施設:6,906人(2.1%)

製薬会社や工場で働く薬剤師は、病院・診療所で働く人の約4割にあたります。ドラッグストアは調剤と近い仕事も多いので、この記事では、仕事の中身が大きく変わる製薬・治験・卸・行政を中心に見ていきます。

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職場ごとの入口を、表で比べる

職場主な仕事薬剤師資格の使われ方未経験からの入口の目安確かめたいこと
製薬会社(製造販売業)安全性情報(PV)、学術・医薬品情報、薬事、品質保証総括製造販売責任者など、法律で薬剤師が要る役割がある中途は経験者採用が中心になりやすい。PVや医薬品情報は臨床経験が評価されることも英語の文書の量、勤務地
工場(製造業)製造管理、品質管理、試験製造所の管理者に薬剤師が求められる場合がある試験や品質管理は、未経験の募集が出ることもある交代勤務の有無、工場の場所
治験(CRO・SMO)モニター(CRA)、治験コーディネーター(CRC)必須でない仕事も多いが、評価されやすい研修から育てる前提の募集が見られる出張の頻度、担当施設の数
医薬品卸営業所の管理薬剤師、医薬品情報営業所の管理者は薬剤師調剤経験者を対象にした募集が多い一人配置かどうか、休日
行政(都道府県・市)薬事の監視指導、保健所、衛生研究所「薬剤師」の採用区分で採る自治体が多い採用試験で入る。年齢の上限は自治体ごとに違う試験の時期、受験できる年齢

入口の目安は、求人の出方の傾向です。同じ職種でも会社や時期で変わるので、気になる職場は個別の求人で確かめてください。

臨床の経験は、企業で何として見られる?

企業や行政の採用担当者は、「臨床で何を判断してきたか」を知りたがります。薬局や病院の仕事は、次のように言い換えられます。

  • 疑義照会:処方の妥当性を確かめ、医師に根拠を示して確認した経験。安全性情報や医薬品情報の仕事に近い
  • 副作用への対応:患者さんの訴えから副作用を疑い、記録し、報告につなげた経験。PVの入口として話しやすい
  • 医薬品情報の調べもの:添付文書やインタビューフォームを読み、医療者に回答した経験
  • 治験薬の管理:病院で治験薬の管理や説明に関わった経験は、CRCやCRAの応募で具体的に話せる

「月に○件の疑義照会」「年に○件の副作用報告」のように、件数で書ける経験を職務経歴書に入れると伝わりやすくなります。書き方は「調剤業務全般」の一行で終わらせないも参考にしてください。

研究室の顕微鏡

「未経験可」の企業求人で、確かめたいことは?

企業の求人では、薬局や病院とは違う条件が書かれていることがあります。応募の前に、次の点を確かめておくと、入社後のずれを減らせます。

  1. 研修の期間と中身:入社後に何か月の研修があり、いつから一人で担当するか
  2. 配属と転勤:本社か支店か工場か。全国転勤の可能性があるか
  3. 英語:社内外の文書をどれくらい英語で読み書きするか
  4. 給与の内訳:薬局や病院でついていた薬剤師手当や当直手当がなくなる分を、基本給や賞与で補えるか
  5. 薬剤師免許の扱い:免許手当があるか、資格が必須か歓迎か

面接で職場の種類を変える理由をどう話すかは、「なぜ病院から薬局へ?」薬剤師の面接で、職場の種類を変える理由を伝える文例6つの考え方が使えます。

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企業に移ったあと、臨床に戻る道は残る

薬剤師の免許は、企業や行政で働いても失効しません。臨床に戻ることもできます。

ただ、調剤や病棟業務から離れていた期間は、薬局や病院からはブランクと同じように見られることがあります。戻る可能性があるなら、勉強会への参加や、休日の非常勤など、臨床との接点を細く残しておく方法もあります。戻るときの準備はブランク明けの薬剤師が、復職の12週間前から始めることの順番が参考になります。

今日やるとしたら

これまでの仕事から、件数や頻度で書ける経験を3つ書き出してください。疑義照会、副作用の対応、医薬品情報の問い合わせなど、どれでもかまいません。

その3つが、表のどの職場の仕事に近いかを見比べると、最初に調べる職場が決まります。

よくある質問

企業に移ると、薬剤師の免許は使わなくなりますか?
職場と仕事によります。医薬品の製造販売業の総括製造販売責任者や、医薬品卸の営業所の管理者など、法律で薬剤師を置くことが決まっている役割があります。一方で、治験のモニター(CRA)のように、資格が必須ではない仕事もあります。求人票で「薬剤師免許必須」か「歓迎」かを見ると、資格がどう使われるかの目安になります。
企業から、また薬局や病院に戻ることはできますか?
免許は企業で働いても失効しないので、戻ることはできます。ただ、調剤や病棟業務から離れていた期間は、職場からはブランクと同じように見られることがあります。戻るときの準備は、ブランク明けの復職と同じ順番で考えると進めやすくなります。
行政(公務員)の薬剤師になるには、何から調べればいいですか?
都道府県や市の職員採用のページで、「薬剤師」や「薬学」の採用区分を探してください。試験の時期、受験できる年齢の上限、社会人経験者の枠があるかは自治体によって違います。配属先は保健所、薬務課、衛生研究所、病院などさまざまです。

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