辞める時期を決めるのは、担当患者さんの退院日ではない。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の退職で、法律と就業規則を分けて考える5つの場面
期間の定めのない雇用であれば、民法では、退職の申し入れから2週間で雇用契約は終わると決まっています。職場の同意がなければ辞められない、という決まりはありません。
それでも、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の退職では、「担当患者さんが退院するまで」「3月末まで」「人が足りなくなるから」と、時期の話が長引きがちです。この記事では、相談の場でよく出てくる5つの言葉を、法律で決まっていること・就業規則で決まっていること・話し合いで決めることに分けて並べます。引き継ぎの日程そのものは理学療法士・作業療法士の退職は3か月前から逆算するで扱っています。
5つの場面を、表で先に見る
| よく出てくる言葉 | 実際のところ | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 担当患者さんが退院するまで待ってほしい | 担当は引き継ぐもの。退院日は退職日を決める条件ではない | リハビリ科の責任者 |
| 辞めるなら3月末にしてほしい | 法律に年度末の決まりはない。申し出の期限は就業規則で見る | 就業規則の「退職」の条文 |
| 施設基準の人数が足りなくなる | 人員をそろえるのは職場側の課題。時期の相談に応じるかは自分で決められる | 自分の予定と就業規則 |
| 研修費や学会費を返してから辞めて | 違約金の約束は労働基準法で禁止。貸付の契約がある場合などは扱いが分かれる | 雇用契約書・研修費の書面 |
| 引き継ぎが終わるまで有給は使えない | 退職日より後に有給の時季をずらすことはできない | 有給の残日数と最終出勤日 |
広告
「担当患者さんが退院するまで」は、退職日を決める理由になる?
入院・外来・訪問のどれでも、担当している患者さんの退院や終了の時期はばらばらです。全員の区切りを待つと、退職日はいつまでも決まりません。
話を進めやすくするのは、退職日を先に決め、そこから逆に引き継ぎを組み立てる方法です。
- 退職日が決まった時点から、新しく担当する患者さんは後任に振ってもらう
- いま担当している患者さんは、評価・目標・プログラム・リスクを1人1枚にまとめる
- 後任と一緒に入る回を、退職の2〜3週間前から作る
患者さんやご家族にいつ伝えるかは、主治医や上司と決めておくと、現場が混乱しにくくなります。
「3月末にしてほしい」と言われたら、就業規則のどこを見るか
民法第627条では、期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わるとしています。月給制の場合、労働局は「賃金計算期間の前半に申し入れて」と案内しています。
実際に効いてくるのは就業規則です。「退職の1か月前までに届け出る」「3か月前まで」などと書かれていることが多く、労働局も、規定があれば原則としてそれに従うよう案内しています。
年度末を勧められるのは、4月に新卒の療法士が入り、後任をそろえやすいからです。都合がつくなら合わせる意味はありますが、年度末でなければ辞められない、という決まりではありません。
契約社員など期間の定めがある場合は、原則として契約期間の終わりまで働く前提になります。1年を超える契約なら、働き始めて1年たったあとは申し出ていつでも辞められると、労働基準法の附則(第137条)で定められています。
「施設基準の人数が足りなくなる」と言われたら?
疾患別リハビリテーション料などの施設基準には、常勤の療法士の人数にかかわる要件があります。人が減ると、職場が届出や算定の見直しを迫られることがあるので、上司が心配するのは自然なことです。
ただ、人員をそろえるのは職場の課題で、一人の退職を止める理由にはなりません。こちらができる配慮は、次のようなものです。
- 就業規則の期限より早めに伝え、採用の時間をつくる
- 最終出勤日を、具体的な日付で一度だけ示す
- 引き継ぎ資料の完成日も、あわせて約束する
「いつまでなら延ばせるか」を聞かれたら、延ばせる上限の日付を先に決めてから面談に入ると、話がぶれにくくなります。

広告
研修費や学会費を返すよう言われたら、どう考える?
労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償の額をあらかじめ決めたりする契約を禁じています。「○年以内に辞めたら罰金○万円」という約束は、この条文に当たる可能性があります。
一方で、資格取得や外部研修の費用を、職場が貸付として出し、一定期間働けば返済を免除するという契約もあります。この場合は、研修が業務として命じられたものか、本人の希望で受けたものか、返済の取り決めがどう書かれているかによって、判断が分かれます。
まず、次の書面を手元にそろえてください。
- 雇用契約書と就業規則の該当部分
- 研修や学会参加のときに署名した書類
- 費用を出してもらった明細
そのうえで判断がつかなければ、労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
有給休暇は、最終出勤日と退職日を分けて組む
労働基準法第39条では、職場は、事業の正常な運営を妨げる場合に限って、有給休暇の時季を変えるよう求めることができます。ただ、退職日より後に時季をずらすことはできないため、退職が決まった人の有給は、残り日数を退職日までに組み込む形で考えます。
引き継ぎと有給を両立させるには、最終出勤日と退職日を分けて示すのが一つの方法です。たとえば、最終出勤日までに引き継ぎを終え、そのあとの期間を有給にあてる、という順番です。日程の組み方は退職前に有給休暇は全部使えるのかにまとめています。
今日やるとしたら
就業規則の「退職」の条文を開き、何日前までに・誰に・どの書式で申し出るかの3点だけをメモしてください。
この3点がわかれば、退職日をいつに置けるかが決まり、引き継ぎの逆算を始められます。
よくある質問
- 就業規則に「3か月前までに申し出る」とあります。守らないといけませんか?
- 労働局は、就業規則に退職の規定があれば原則としてそれに従うよう案内しています。一方で、極端に長い期間を定めた規定は、退職の自由を制限しすぎるとして無効とされることがあるとも説明しています。3か月前であれば、引き継ぎの期間として受け入れられることが多いので、まずは規則に沿って伝えるのが進めやすい方法です。
- 契約社員(有期契約)でも、2週間で辞められますか?
- 期間の定めがある契約は、原則として期間が終わるまで続きます。やむを得ない事由がある場合はその前でも解除できるとされています。また、1年を超える期間の契約では、働き始めて1年たったあとは、申し出ていつでも退職できると労働基準法の附則で定められています(一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約などを除く)。
- 退職の話がこじれたら、どこに相談できますか?
- 都道府県労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」で、退職や研修費の返還を含む労働の相談を無料で受け付けています。相談する前に、就業規則の該当部分、雇用契約書、研修費に関する書面を手元にそろえておくと話が早く進みます。
この記事に関係する職業
仕事内容・平均年収・求人倍率は、それぞれの職業ページにまとめています。